たきめぐり
桂木橋 不動の滝(再訪)および打滝川
京都府相楽郡笠置町笠置水晶谷
前回の続きです.
二双川渓流を辞して,柳生方面から笠置に抜けました.笠置の町に抜ける途中に桂木橋があって,その奥に不動の滝がありましたので,再訪しました.
桂木橋 不動の滝.なかなか見ごたえのある水量でした.
滝を構成している岩石が妙に黒っぽいので寄ってみました.
真横から.黒色はマンガン酸化バクテリアか何かの影響で黒くなった変成岩のようでした.この付近の変成岩は泥質起源のようで,ホルンフェルス様の岩石が見られ,割れ目に黄鉄鉱が鉱染したものもありました.
川原の転石を調べようと,南から2つ目のヘアピンカープの先の堰堤に降りてみました.
砂防堰堤.堰堤の横に溜まった土砂が上げてありました.
打滝川の河原.右手の山の小尾根を越えると,鳥谷という谷で,明治の中期から後期にかけて広域変成岩中の石墨を稼業した観音坂鉱山がありました.一般的にこの鉱山は観音坂で通っていますが,鉱区一覧に「観音坂鉱山」という名称で記載があって,こちらが正式名称のようです.
地理的に近いのでそういう石がこちらにもあるかもしれないので小一時間ぶらぶら探しに歩きました.
川原にあった変成岩.
川原に多いのが黒色の黒雲母をふんだんに含んだ黒っぽい岩石で,片理性の富み,風化したものは少しの衝撃で,簡単にはがれるように割れました.
ほかに白雲母と石英だけの結晶片岩のような岩石もあって,一部に珪線石や鉄礬石榴石を含んでいました.
地名が笠置町笠置水晶谷と云って,古来水晶が出たのかと勘繰りましたが,そういう感じの石は無く,少量の緑泥石を含んだ石英はありました.
先月ごろより,領家帯の変成岩中の珪線石に凝っていて,当地でも地質図上では記載がありましたので,いろいろ探してみました.外観からそういうものが入っていそうな雰囲気のものを選んでみましたが,後で小割して研磨したところ,実体顕微鏡下でようやくわかるような小さなものしかありませんでした.
堰堤から少し遡ったところにある川原で,片麻岩質岩を切るペグマタイト質の花崗岩脈が入ったものを拾いました.
赤っぽい鉱物が脈中にありました.小割するとサイズが小さくなってしまうので,周囲だけ成形して,裏面を研磨しました.
サンプリングした岩石.黒色部は泥質起源と思われる変成岩類.脈になったところはペグマタイト質の花崗岩の脈.白っぽいところは長石類.黄色く見えるのは石英など.下の方の板状に見える黒色部は雲母類.これの裏面を研磨面にしました.
赤いところは当初,鉄礬石榴石だとおもっていましたが,研磨すると柱状の鉱物で紅柱石でした.
赤いところが紅柱石です.紅柱石は山城南部で黒色のホルンフェルス中によくみられる鉱物ですが,色が黒や白であまりキレイなものは少ない傾向にありました.木津川南部は珪線石の多い岩石と事前情報で知っていましたので,紅柱石は予想していませんでした.ここの紅柱石は色がよく,光沢も強い結晶で端から端までの長さは最大9㎜,幅1.5㎜ありました.
ほかにもう一つサンプリングしていて,こちらは黒っぽい黒雲母に富む変成岩で,レンズ状の優白色部があって,その一部に俄かに青色を呈する鉱物が含まれていました.まわりの石基に石英が多いようで,磨っているときに硬度の差で,レンズ状の部分が菫青石だろうということがわかりました.
それとは別の優白色の長石からなるレンズがあって,その中にチタン石のような鉱物が含まれているところがありました.
研磨面の拡大写真です.白っぽいところは長石が多いですが,鏡下では白雲母と微細な珪線石が入っているようでした.その白色部に暗い褐色で光沢が非常に強い(金剛光沢くらい)で突確に近い板状の鉱物が含まれていました.結晶の形と強い光沢からチタン石かと思われます.左下の鉱物は,かなり微細な鉱物で,肉眼では細かい柱状の結晶の集合で,おそらく電気石の類を思われます.
この川原で確認した鉱物は黄鉄鉱・石英・磁鉄鉱・方解石・鉄礬石榴石・チタン石?・紅柱石・珪線石・電気石類?・菫青色・緑泥石・白雲母・長石類などでした.
今回の滝巡りはこれで終了しました.