顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真139
―モリブデン鉛鉱―
産地:Musonoi mine, Kolwezi mining district, Lualaba,
Democratic Republic of Congo.(非売品).
Wulfenite モリブデン鉛鉱(水鉛鉛鉱・黄鉛鉱)
[組成] Pb2+[MoO4]
[結晶] 正方晶系.正方板状・複錐・錐台・短柱状.葉片状
集合などになる.
[色] 灰褐色・淡黄色・灰黄色・黄色・黄橙色・橙色・赤橙
色・茶褐色・褐色・赤色・赤褐色など.
[光沢] 金剛光沢~樹脂光沢.
[モース硬度] 2.5~3
[比重] 6.82~6.9
[劈開] {011}に明瞭,{001},{013}に不明瞭.
[条痕] 白色・淡黄色.
[蛍光性] 産地によってUVで黄色~赤色.
[名称] オーストリアの鉱物学者.Franz Xavier von Wolfenに
因む.
[原産地] Bad Bleiberg, Villach-Land district, Carinthia,
Austria.
ほか,硝酸で分解.
ひさびさの顕微鏡写真です.今回はモリブデン鉛鉱にしました.黄色から赤色で光沢の強い板状結晶が魅力的な鉱物です.モリブデン鉱物の二次鉱物として産する鉱物で,初成の鉱物が近くにないときも産することがあって,現場に出ていると,思いがけないところから出てきたことがありました.
写真を撮影するにあたって,いろいろ標本を探しましたが,ほかのHPと同じような標本ばかりでしたので,少し趣向が変わった標本を撮影しました.
上の標本はウラン鉱物を産出している鉱山からのものです.赤橙色の短柱状の結晶がうまく撮影できました.母岩の緑色部は主に孔雀石で,黄色は鉛(Pb)とウラン(U)の珪酸塩鉱物のカソロ石です.緑色の板状も少し見えていてこちらは燐銅ウラン鉱です.産地は1940年ごろより露天掘りで採鉱された鉱山です.
ほかの産地のものをいくつか.
産地:Apache mine, Radium, Burch area, Globe Hills mining district,
Gila county, Arizona, USA.(非売品).
レモン黄色の濃い標本があったので撮影しました.板状になっていて,すぐ近くにヴァナジン鉛鉱やデクロアゾー石などの鉛の二次鉱物を伴っていました.
産地:Vekol mine, Sif Vaya area, Vekol mountains. Pinal county, Arizona,
USA.(非売品).
黄色―橙色の中間的な色の標本を撮影しました.1880年ごろから開発された古い鉱山の標本です.もともと塩化銀鉱の標本でしたが,酸化して黒くなってしまい,代わりに広範囲についていたモリブデン鉛鉱のラベルに付け替えました.
黄色い結晶がモリブデン鉛鉱です.
以下,国産の標本です.二次鉱物の標本としておいていた標本は大部分を整理したため,手元にあるモリブデン鉛鉱の標本は兵庫県内のだけになってしまいました.
産地:兵庫県川辺郡猪名川町槻並 柿の木鉱山(非売品).
購入品です.鉛ゴム石とモリブデン鉛鉱の名前のラベルがついていました.黄色皮膜状に見えるのが,鉛ゴム石とのことで,粒の粗いところに三角形の頭をした細かい結晶が少し入っていました.モリブデン鉛鉱はそれらより大きい粒で,灰褐色に近い色をしていますが,光沢が強いので見分けられました.
産地:兵庫県川辺郡猪名川町民田.(非売品).
7~8年前に一庫ダムを歩いて周回したときに,林道に沿うガレ場のある谷で拾った標本です.母岩は緑色岩でピンク色の桃簾石を伴っていて,その割れ目に黄色いのがついていて気づきました.ほかに紛らわしい色の緑鉛鉱を伴っていました.
産地:兵庫県養父市大屋町明延 明延鉱山(非売品).
8年くらい前にサンプリングした標本です.最近になって整理していたら出てきました.母岩は石英脈が噛んだ緑色岩で,珪孔雀石かアロフェンか判別し辛い緑色の鉱物を伴っていました.これの割れ目を光沢の鈍い非晶質とみられる水色の物質が充填していて,その中から灰黄色―黄色の結晶がいくつも入っていました.いずれも小さなもので,顕微鏡で見てやっとの大きさでした.
母岩に含まれる未変質の鉱物は黄鉄鉱・黄銅鉱・閃亜鉛鉱・方鉛鉱などで,モリブデン鉛鉱の鉛の供給源はありましたが,モリブデンの供給源ははっきりしませんでした.